2024

03

元麻布の家

住宅

東京都港区元麻布

data

  • 戸建て住宅(2世帯住宅)
  • 白石建設株式会社
  • 鉄筋コンクリート造
  • 地下なし地上3階建て
  • 2024年3月

昨今の東京都心の高級住宅街では、景観が少々困ったことになってきています。理由は、大きな邸宅であればあるほど、街路に面した窓を設けず、街に背を向けるスタイルが主流になっているためです。特大の車庫シャッターだけが街との関わりを持つ唯一の要素となっていることも少なくありません。セキュリティやプライバシー重視の結果としてこのようになってしまうのかもしれませんが、その結果、無機質で人の気配が乏しい街並みが形成されつつあります。

この家のクライアントには、そんな「閉じた」発想はありません。もちろんセキュリティやプライバシーも重視していますが、同時に街に緑を増やし、地域との関わりを大切にしたいと考えています。そこで、2階リビングに続くウッドデッキテラスの手すりをあえて透明ガラスにし、テラスの植栽が外からも見えるように工夫しました。また、1階の半分をピロティにすることで街路からの視界の広がりを確保し、特大シャッターが直接街路に面さないように配慮しています。

この作品は、建築好きのクライアントが思い描くイメージを建築家としてサポートし、より良くするためにどうすればよいか、議論を重ね、共に創り上げた住宅です。

以下、写真はすべて写真家・齋部功 撮影

外壁仕上げの特徴は、鉄平石の小端積みにあります。この石は昭和の時代、東京近辺でも門柱や外構工事でよく使われていた素材です。しかし、産地である信州でも採石場が減少し、最近は建築資材としてほとんど使用されていません。クライアントの旧宅にも鉄平石が使用されていたことから、新居でもぜひ取り入れたいという要望を受け、今回実現しました。この鉄平石が生み出す陰影が、予想以上に建物に重厚感と落ち着きをもたらし、温故知新という言葉の通り、新たな発見がありました。

 

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