2015
12
[住宅]
東京都新宿区に建つ住宅兼、オーナーの事務所ビルである。
周辺は雑多な建物が密集するなか、住宅、事務所という用途に似つかわしい、ほどよい華やかさの表現を試みた。
その表現手段としてプリズムガラス、正確に言うならば面取りした19mm厚の高透過ガラスを、外壁の石の間から突出させている。
これが例えば商業施設であれば出幅をもっと大きくし、間隔も密に並べれば光のヴェールに覆われた外観が表出するであろうけれど、ある意味ストイックに、遠慮がちに出幅35mm、密なところで300mmピッチとした。
それでも陽射しの角度により七色に輝く虹を見つけることができたり、キラキラとした光のラインが建物に華を添えてくれる。たとえ曇天であっても周囲の光を集めてくれるので、黒く沈むことはない。
これには仕掛けがある。見えているガラスは35mmほどであるが石の中に埋まっている部分を合わせると125mm。しかもガラスの裏側の小口はハンマーによるラフカットとし、これがステンレス鏡面の下地金物に反射することで、多様な光の反射を生み出している。
かつて神楽坂のビルで高透過ガラスをガラスフィンとして外壁に並べることで、糸をピンと張ったような緊張感ある表現ができたものの、光の反射、屈折という意味でいえば、思いのほか静かな表現であった。
ダイヤモンドカットのようにガラスの面が複雑であればあるほど、光に遊びが生まれる。
このプロジェクトでは石張りの外壁や、周辺の建物より頭一つ分、背の高いボリュームによる威圧感を、プリズムガラスによる光の戯れが和らげてくれている。