2018
07
[店舗・ビル]
千代田区神田小川町2丁目のオフィスビルの建て替え計画である。
オフィスビルといえば、ガラスカーテンウォールに囲まれ、昼光色の照明が整然と輝く均質空間であることが求められていた。
ところが社会が大きな変化に直面している最中、オフィスビルの姿も従来とは異なるのではないだろうか?
変化の一つは環境問題である。
異常気象だ! 誰もそう感じる暑さが何日も続いた夏であった。
より大きなガラス面は、建築を誇示できる重要なデザインエレメントである。
ただ、容赦ない直射日光に抗い、空調をフル回転させることは、もはや時代にそぐわない。
一方で冬場の陽だまりや日中の明るさを上手に取り入れることは、省エネ上の課題である。
さらには直撃台風による嵐のなかで、飛来物によるガラスの破壊をいかにすれば防ぐことができるか?
地球温暖化は着実に進行し、来年、また猛烈な台風に直撃されるかもしれない。
これらを解決するデバイスが「外付け縦型、可動ルーバー」である。
・ガラスの外で直射光を遮ったほうが室内への入射熱を圧倒的に減らすことができる。
・横型ルーバーは完全に閉じてしまわない限り、西日を遮ることができないが、縦型ルーバーであれば容易である。
・ルーバーを可動させることで、時間帯、季節ごとに、あるいは室内の利用方法によって陽射しをコントロールできる。
・暴風時はルーバーを閉じることで雨戸のようにガラスを守ることができる。
これらを可能にするルーバーは、アルミ板の折曲げでは強度が不足するため、飛行機の羽のような断面をもつ、アルミ一体押出成形品でなければならない。
このデバイスで建物全体を覆うことで、時々刻々変化する、タペストリーのような表情が生まれるのではないか、と期待している。
もう一つの変化は「働き方改革」である。
煌々とした照明の大空間で、デスクがずらりと並んだ立派なオフィスに、人は魅力を感じなくなってしまった。
スマホとノートパソコンさえあれば仕事ができるため、自分自身が最も集中できるワークスペースを人は求めている。
オフィスはむしろ、人と人が出合い、そこからヒントを得る、そんなコミュニケーションの場である。
一人ひとりがスマホでダウンライトを調光調色し、個別空調の強弱をコントロールできるよう、設計を進めている。
そんなオフィスビルの夜景は、白い光が煌々と輝く姿ではなく、漏れてくる光の色や強弱は様々で、どちらかといえば住まいのような様相を呈するのではないだろうか?